「天然由来」のキサンタンガムでも、生後3か月未満の赤ちゃんには使用が制限されています。
スーパーで買ったドレッシングの裏面を見ると、「増粘剤(キサンタンガム)」や「増粘多糖類」という文字を見たことがある方は多いのではないでしょうか。キサンタンガムは、英語で「Xanthan Gum」と書き、キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris) という微生物がトウモロコシなどのデンプンを発酵させるときに生み出す多糖類(たくさんの糖がつながった物質)です。
「微生物」と聞くとちょっと不安になるかもしれませんが、ヨーグルトや味噌、納豆と同じように、発酵というプロセスを利用して作られる天然由来の物質です。化学的にゼロから合成された添加物ではありません。製造工程はシンプルで、微生物を培養→発酵→回収→精製→乾燥→粉砕、という流れで作られます。
完成したキサンタンガムは白〜黄白色の粉末で、水に溶かすと独特のとろみが生まれます。その粘りの強さは「少量で大きなとろみが出る」点が特徴で、食品への使用量はおおむね全体の0.01〜0.2%程度と、ごく微量です。つまり少量で効くということですね。
キサンタンガムが使われている食品は非常に幅広く、私たちの日常の食卓にはほぼ毎日登場しています。代表的なものを以下に挙げます。
| カテゴリ | 具体的な食品例 | キサンタンガムの役割 |
|---|---|---|
| 🥗 調味料 | ドレッシング、ソース、ケチャップ | 油と水の分離を防ぐ、とろみをつける |
| 🍦 デザート | アイスクリーム、ゼリー、プリン | なめらかな食感の維持、形崩れ防止 |
| 🍱 加工食品 | 冷凍食品、レトルト食品 | 冷凍・解凍後もとろみを保持 |
| 🍞 パン・菓子 | グルテンフリーパン、スポンジケーキ | 食感の改良、水分の保持 |
| 🥤 飲料 | スムージー、乳飲料、栄養ドリンク | 粘度調整、原料の沈殿を防ぐ |
このように、ひとつの日の食事の中で、知らないうちにキサンタンガムを複数回摂取していることは珍しくありません。
参考:キサンタンガムが使われる食品カテゴリと用途についての詳細な解説
「食品添加物」という言葉だけで不安になる気持ちはよくわかります。でも、キサンタンガムの安全性については、世界中の権威ある機関がしっかりと評価した結果が出ています。
まず、FAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同機関であるJECFA(食品添加物専門家委員会) は、キサンタンガムの一日許容摂取量(ADI)を「制限なし(Not Specified)」と設定しています。ADIとは「生涯毎日食べても健康に影響がないとされる量」のことで、「制限なし」というのは、通常の食生活の範囲で健康リスクが確認されなかった、という非常に高い評価を意味します。
1988年の改定でこの基準が設けられて以来、長年の研究でも大きな問題は報告されていません。結論は明快です。
さらに、欧州食品安全機関(EFSA)が2017年に実施した再評価でも「慢性試験および発がん性試験において有害影響は報告されなかった」と明記されています。また成人がキサンタンガムを体重1kgあたり214mgという非常に高い用量で10日間摂取した試験でも、有害な影響は確認されていません。日本でも1995年の食品衛生法改正によって「既存添加物」(長年の使用実績がある安全な天然添加物)として認められています。
体内での動きも安全性が高い理由のひとつです。キサンタンガムは食物繊維に近い性質を持ち、消化酵素で分解されにくいため、食べても体内にほとんど吸収されず、そのまま排出されます。蓄積によるリスクもほぼないと考えられています。これは安心な点ですね。
一点だけ注意したいのが、非常に大量に摂取した場合の話です。キサンタンガムを一度に15g以上という極端に大量の量(スプーン山盛り数杯分に相当)を摂取すると、お腹が緩くなったり、腹部の不快感が出ることが報告されています。ただし、この量は食品中に含まれる通常の使用量とはまったく次元が異なります。食物繊維を一度に大量に食べてお腹が緩くなるのと同じ仕組みで、特別危険なものではありません。
参考:欧州食品安全機関(EFSA)によるキサンタンガム再評価の概要(日本語要約)
キサンタンガム(E 415)の再評価に関する科学的意見書|食品安全委員会(食品安全関係情報)
全体的に見て安全性の高いキサンタンガムですが、例外的に注意が必要なケースが2つあります。特に小さなお子さんを育てている方には、ここが一番大切な情報かもしれません。
①トウモロコシアレルギーがある場合
キサンタンガムは製造過程でトウモロコシ由来のデンプンを栄養源として使います。精製工程でほとんど除去されますが、微量のトウモロコシタンパク質が残留する場合があります。このタンパク質がアレルゲンとなり、トウモロコシアレルギーを持つ方が摂取すると反応を起こす可能性があります。
大人であれば自分のアレルギーを認識していることが多いですが、乳幼児は食物アレルギーの有無がまだわかっていないケースも多いです。コーンスープやコーン菓子を食べて肌が荒れたり、ぐずったりした経験があれば、念のため小児科医に相談するとよいでしょう。
②生後12週(3か月)未満の乳児への配慮
これはあまり知られていない点ですが、前述のEFSAの再評価レポートには「この再評価は12週齢未満の乳児には適用されない」という記述があります。生後3か月未満の赤ちゃんは、消化器系がまだ非常に未熟なため、大人と同じ基準での安全評価が難しい段階にあります。通常、生後3か月未満の乳児が食品添加物を含む加工食品を口にする機会は少ないですが、一部の乳児用とろみ調整食品などを使う場合は医師や栄養士に相談するのが安心です。
なお、小麦や大豆を原料に使ったキサンタンガムも一部存在するため、これらのアレルギーがある場合も同様に注意が必要です。アレルギー体質の家族がいる場合は、食品の成分表示を確認する習慣をつけておくといいでしょう。
参考:乳幼児とキサンタンガムの関係についての詳細情報
キサンタンガムの危険性(大人・子供・赤ちゃんへの害は?)|食品添加物データベース
食品の裏ラベルを見ると「増粘多糖類」と書いてあることがよくあります。これとキサンタンガムはどう違うのでしょうか?実はここに、消費者がつい見落としがちなポイントがあります。
食品表示法のルールでは、増粘・安定の目的で2種類以上の多糖類(天然由来の増粘剤)を使った場合に「増粘多糖類」という一括表示が認められています。つまり「増粘多糖類」と書いてあっても、その中身が何なのかはラベルだけでは確認できない、ということです。
一方、キサンタンガム1種類だけを増粘目的で使う場合は「増粘剤(キサンタンガム)」と個別表示されます。成分が1種類でも「増粘多糖類」の一括表示が使われることもあるため、表示だけでは中身がわかりにくいケースもあります。
なぜ一括表示が認められているかというと、食品メーカーが使用する多糖類の種類を変えるたびにラベルを刷り直すコストを下げるためや、独自の配合レシピを保護する目的があるとされています。消費者側からすると少し不便に感じる部分かもしれません。
アレルギーを持つ方や添加物を気にする方にとって、表示をしっかり読む習慣は大切なことです。「増粘多糖類」と記載がある場合は、メーカーの公式サイトやお客様窓口で詳細を問い合わせると確認できることがあります。手間はかかりますが、必要な情報を得るための一つの手段として知っておくと役立ちます。
参考:食品添加物の表示ルールについての解説(消費者庁)
食物アレルギー表示に関するリーフレット|消費者庁(PDF)