国産ナチュラルチーズと書かれているラベルでも、妊娠中に食べられるものがあります。
妊娠中にナチュラルチーズを避けるよう言われる原因は、リステリア・モノサイトゲネス菌(リステリア菌)という細菌です。この菌は加熱殺菌されていない食品に潜む可能性があり、一般的なナチュラルチーズはその製造工程上、原料の加熱が義務付けられていません。
健康な成人がリステリア菌に感染しても、軽い風邪症状で済むことがほとんどです。しかし妊婦さんは話が違います。妊娠中は免疫機能が意図的に抑制されている状態にあるため、少量の菌でも感染・重症化しやすくなります。厚生労働省の発表によれば、妊婦はリステリア症への感染率が通常の健康成人と比べて約20倍高くなると言われており(外務省検疫所情報より)、その深刻さがわかります。
万が一感染した場合、本人に現れる症状は38℃以上の発熱や倦怠感程度でも、胎盤を通じて胎児に感染すると流産・早産・死産、さらに新生児の敗血症や髄膜炎につながるリスクがあります。これが妊婦さんにとってナチュラルチーズが「NG食材」と言われる理由です。
怖い話ですね。
ただし、ここで重要な事実があります。国内でリステリア菌を原因とする食中毒として正式に報告されたのは、2001年に北海道で起きたたった1件だけです(農林水産省データより)。しかも死者は出ていません。リスクの存在は事実ですが、国産の安全基準のもとで作られた製品においては、そのリスクは非常に限定的です。これが原則です。
産後・妊娠中の食事管理について詳しく解説している信頼性の高い情報源です。チーズのリステリア菌に関する妊婦への影響が詳細に記載されています。
「国産ナチュラルチーズなら全部OK」というわけではありません。安全の条件は、「原料乳を加熱殺菌してからナチュラルチーズを製造している」「出荷前にリステリア菌検査を実施している」の2点のどちらかを満たしているかどうかです。
国内大手3社は、いずれも公式サイトでこの旨を明確に公表しています。それが条件です。
| メーカー | 代表的なOK商品 | 注意点 |
|---|---|---|
| ⭐ 雪印メグミルク | 北海道100 さけるチーズ・カマンベール・クリームチーズ・カッテージチーズ など | 「加熱用」シュレッドタイプは加熱必須 |
| ⭐ 明治 | 明治北海道十勝カマンベール・生モッツァレラ・パルメザンチーズ など | 「加熱用」表示品は要加熱 |
| ⭐ 森永乳業(クラフト) | クラフト フレッシュモッツァレラ・100%パルメザンチーズ・無垢ゴーダ など | 「加熱用」表示品は要加熱 |
| ⭐ よつ葉乳業 | 北海道十勝 クリームチーズ・チェダー・ゴーダ・カマンベール など | シュレッドタイプ3種は要加熱 |
これらのメーカーが公式サイトで「妊娠中でも安心してお召し上がりいただけます」と明記しているのは、原料乳の段階でリステリア菌が死滅していることを製造工程で保証しているからです。なお、チーズを購入したあとは必ずメーカーの公式サイトで最新情報を確認する習慣をつけておくと安心できます。
逆に避けるべきチーズは次のものです。
国産・大手メーカー・加熱殺菌済みの3条件が基本です。
よつ葉乳業の公式サイトでは、妊婦さんが食べられる製品と食べられない製品を一覧表形式で丁寧に案内しています。購入前の確認に便利です。
妊婦さんにチーズはNG?理由やチーズの選び方 – よつ葉乳業
「国産か輸入かくらいわかる」と思っていると、意外と落とし穴があります。スーパーでよく見かけるチーズのパッケージには、小さな文字で「原産国:フランス」「原材料:生乳(殺菌)」などと書かれているだけで、見落としやすいのです。
パッケージで確認すべき4つのポイントは以下のとおりです。
プロセスチーズであれば産地にかかわらず加熱工程を経て製造されているため、妊娠中でも安全に食べられます。これだけ覚えておけばOKです。雪印メグミルクの「6Pチーズ」やQBBの「ベビーチーズ」がプロセスチーズの代表例です。
なお、スーパーのチーズ売り場には国産・輸入が混在して並んでいることが多く、デザインだけで判断するのは危険です。特に「カマンベール」「モッツァレラ」「クリームチーズ」は国産・輸入の両方が陳列されていることが多いため、購入前に必ず産地と製造者を確認してください。
チーズ売り場での確認は30秒あれば十分です。この30秒の習慣がリスクを遠ざけてくれます。
napnap(ナップナップ)による徹底調査記事では、妊娠中に食べられる国産ナチュラルチーズの具体的な商品名リストを確認できます。購入前のチェックに役立ちます。
【徹底調査】妊娠中でも食べられるナチュラルチーズ – napnap
安全なチーズがわかったところで、チーズを食べることのメリットを知っておくと、より積極的に取り入れやすくなります。
チーズは妊婦さんに不可欠な栄養素の宝庫です。特に重要なのがカルシウムです。妊娠中のカルシウム推奨摂取量は1日650mg(18〜49歳女性、厚生労働省推奨)ですが、国民栄養調査(令和4年)では実際の平均摂取量が約200〜300mgも不足していることが明らかになっています。不足分の補給が急務です。
チーズはカルシウム補給において非常に効率的な食品で、ナチュラルチーズ(ゴーダ・チェダー系)は100gあたり約600〜700mgのカルシウムを含みます。20〜30gを1日の目安とすれば(ヒロクリニック推奨)、手のひらにのる薄切り2〜3枚程度で120〜200mgのカルシウムを摂取できる計算になります。
チーズに含まれる主な栄養素
| 栄養素 | 妊娠中への効果 |
|---|---|
| カルシウム | 胎児の骨・歯の形成をサポート。母体の骨密度低下を防ぐ |
| たんぱく質 | 胎児の体細胞・組織の形成、母体の体調維持に必要 |
| ビタミンB2 | エネルギー代謝を助け、皮膚・粘膜の健康維持に寄与 |
| 亜鉛 | 免疫機能の維持、胎児の細胞分裂・成長に関与 |
ただし、チーズは脂質・塩分も多いため食べすぎには注意が必要です。1日20〜30gが適量の目安と言われています。この量を安全な国産チーズで毎日コツコツ摂取するのが理想的です。
カルシウム摂取に悩んでいる方は、毎食の食事にカマンベールやさけるチーズを1〜2切れ添える習慣から始めると取り入れやすいでしょう。
国産の安全チーズが把握できたあとでも、見落としが起きやすいポイントがあります。その代表が「加熱用」と表示されたシュレッドタイプのチーズです。
雪印メグミルク・明治・よつ葉乳業などのチーズには、同じメーカーでも「加熱用」「要加熱」と書かれた製品が混在しています。これは「おいしく溶けるように作ってある」という意味ではありません。食品衛生法上の「要加熱」は、「加熱しないと食中毒リスクがある」という意味です。つまり同じ国産でも、このタイプは必ず中心温度75℃・1分以上の加熱が条件です。
外食での注意点も見落とされがちです。ピザ、グラタン、ドリアなどのオーブン料理にのったチーズは十分に加熱されているため問題ありません。一方で注意が必要なのは以下の場面です。
外食で「このチーズは大丈夫?」と迷ったら、「国産のチーズですか?」と一言スタッフに確認するのがもっとも確実な方法です。厳しいところですが、外食時の産地確認はひとつの習慣にしてしまうと楽になります。
また、国内でリステリア食中毒の食品媒介事例が2001年の1件だけという事実(農林水産省データ)を踏まえると、過剰に神経質になる必要はありません。「国産・大手メーカー・加熱殺菌済み・加熱用でない」という4つの条件を頭に入れておくだけで、必要十分なリスク管理ができます。大切なのは正しく理解して、安心して食べることです。
食品安全委員会による「お母さんになるあなたと周りの人たちへ」では、妊婦向けの食品リスク情報が行政の正式な見解として掲載されています。