甘酒を毎日飲めば血圧が下がると思っていませんか?実は飲み方を間違えると、血圧が上がることもあります。
甘酒、特に米麹から作られた甘酒には、「ACE阻害ペプチド」と呼ばれる成分が含まれています。このペプチドは、血圧を上げる働きをするアンジオテンシンIIという物質の生成を抑える酵素(ACE=アンジオテンシン変換酵素)を邪魔する役割を果たします。つまり、ACEが働けなくなると血管が収縮しにくくなり、血圧が下がりやすい状態になるということです。
これは基本です。降圧剤の一種「ACE阻害薬」と同じ経路に作用するのが大きな特徴で、薬ではなく食品で同じルートに働きかけられる点が研究者の注目を集めています。
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の研究では、米麹甘酒に含まれるペプチドが実験動物において血圧上昇抑制効果を示したことが報告されています。ただし「飲んだら即効で下がる」というものではなく、毎日継続して取ることで緩やかに作用するタイプです。継続が条件です。
甘酒には他にも、血管の健康を支える成分が複数含まれています。ビタミンB群(特にB1・B2・B6)は神経と血管の機能維持に関わり、葉酸は動脈硬化を招くホモシステインの増加を抑制する働きがあるとされています。加えて、麹菌が生み出す「エルゴチオネイン」という抗酸化物質も注目されており、酸化ストレスによる血管ダメージの軽減に役立つ可能性が示されています。意外ですね。
こうした成分が複合的に作用することで、血圧への好影響が期待されると考えられています。
<参考:農研機構「米麹に関する機能性成分の研究」>
農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)公式サイト
甘酒には大きく2種類あります。「米麹甘酒」と「酒粕甘酒」です。血圧への効能という観点では、この2つの特性の違いを押さえておくことが非常に重要です。
米麹甘酒は、蒸したお米に麹菌を繁殖させて作ります。アルコールはゼロ。麹菌が米のデンプンをブドウ糖に分解するため自然な甘みがあり、前述のACE阻害ペプチドや、腸内環境を整えるオリゴ糖、そして「腸活」で話題のコウジ酸なども豊富に含まれています。血圧ケアの観点で選ぶなら米麹甘酒が原則です。
一方、酒粕甘酒は日本酒を作る際に出る酒粕をお湯で溶かしたもので、アルコールが1%前後残っています。体を温める効果や、レジスタントプロテイン(腸内でコレステロールを吸着する働きがあるたんぱく質)が含まれるなどの特徴はありますが、ACE阻害ペプチドの量は米麹甘酒と比べて少ないとされています。加えてアルコールが含まれるため、飲酒制限が必要な方や妊婦・授乳中の方には向きません。
| | 米麹甘酒 | 酒粕甘酒 |
|---|---|---|
| アルコール | なし(0%) | 少量あり(約1%前後) |
| ACE阻害ペプチド | 豊富 | 少なめ |
| 糖質 | 高め | 低め |
| カロリー | やや高め | 低め |
| 主な効能 | 血圧・腸活・美肌 | 保温・コレステロール |
血圧ケアが主な目的なら米麹甘酒を選ぶこと、これだけ覚えておけばOKです。
スーパーや通販で手軽に入手できる米麹甘酒ですが、購入前には原材料表示を確認する習慣をつけましょう。砂糖や食塩が添加されているものは糖質・塩分の過剰摂取につながる可能性があるため、「米・米麹のみ」のシンプルな原材料のものを選ぶのが賢明です。
どれだけ体に良い食品でも、飲み方を間違えると効果は半減します。甘酒の血圧ケアへの効能を引き出すための量とタイミングを確認しておきましょう。
1日の適切な摂取量の目安は、コップ1杯(約150〜200ml)です。これはおよそ小さな湯呑み1杯分に相当します。米麹甘酒100mlあたりの糖質は約17〜20gほどあり、これはご飯(白米)約40g分に相当する量です。飲みすぎに注意です。
飲むタイミングについては、以下の3つがよく推奨されています。
- 🌅 朝食時・朝食代わり:エネルギー補給と腸の活性化が期待できます。ただし糖質が多いため、他の朝食と合わせる場合は量を控えめに。
- 🕑 午後の間食(14〜16時ごろ):1日のなかで血糖値が下がりやすい時間帯で、甘酒のブドウ糖がエネルギー補給に役立ちます。夕食前の糖質過剰摂取を避けやすいタイミングです。
- 🛁 入浴前後:血行促進効果と水分補給を兼ねられますが、糖質を考えると少量(100ml程度)にとどめましょう。
夜寝る前に飲む習慣のある方は少し注意が必要です。甘酒のブドウ糖は吸収が速く、夜間の血糖値スパイクを引き起こしやすいことが指摘されています。就寝前の摂取は量を減らすか、控えるのが無難です。
また、温めて飲む方が胃腸への負担が少なく、成分の吸収率も高まると言われています。冷たいままより50〜60℃程度に温めた状態が体には馴染みやすいです。ただし70℃以上に加熱すると麹菌の酵素が失活するため、電子レンジで長時間加熱しないよう気をつけましょう。温度管理が条件です。
「血圧に良いと聞いて毎日飲み始めたら体重が増えた」という声は、実は珍しくありません。甘酒の糖質の多さが見落とされがちだからです。これは見過ごせないデメリットです。
市販の米麹甘酒(200ml)1本あたりのカロリーはおよそ130〜160kcal。これはチョコレートビスケット3〜4枚分に相当します。1日1杯を習慣化する分には問題ありませんが、家族みんなで飲む感覚で複数杯飲んでいると、知らないうちに糖質とカロリーが積み重なります。
血圧ケアを意識するのであれば、日々の食生活全体の塩分・糖質バランスとセットで考えることが大切です。「甘酒を飲んでいるから安心」ではなく、甘酒はあくまで補助的な役割と位置づけるのが正しい向き合い方です。
また、糖尿病や高血糖傾向のある方は、甘酒を飲む前にかかりつけの医師に相談することを強くおすすめします。甘酒のブドウ糖は消化不要でそのまま吸収されるため、血糖値を急上昇させやすい特性があります。これは健康な方にとってはエネルギー補給のメリットですが、血糖値管理が必要な方にはリスクになり得ます。
日常的に血糖値や血圧を記録したい場合、最近は家庭用の血圧計と連携できるスマートフォンアプリ(例:オムロン「血圧手帳アプリ」など)が充実しています。甘酒を取り入れ始める前後で数値を比較記録することで、自分の体への効果を客観的に把握しやすくなります。
実は血圧と腸内環境には深い関係があります。腸内細菌のバランスが崩れると慢性的な炎症が起きやすくなり、それが血管に負荷をかけて血圧上昇につながる可能性があることが近年の研究で示されています。意外なつながりですね。
米麹甘酒に含まれるオリゴ糖と食物繊維は、腸内の善玉菌のエサになります。善玉菌が増えると腸内環境が整い、炎症物質の産生が抑えられ、間接的に血圧コントロールにも貢献するというわけです。つまり「腸を整えながら血圧も整える」というダブルの働きが期待できます。
この効果を最大化するために、甘酒と相性のよい食品を朝食や間食に組み合わせるのがおすすめです。
- 🥗 ヨーグルト:乳酸菌と甘酒のオリゴ糖が腸内で相乗効果を発揮します。
- 🫐 バナナ:フラクトオリゴ糖が豊富で善玉菌のエサになり、甘酒との組み合わせで腸活効果がアップします。
- 🧅 玉ねぎ(加熱したもの):ケルセチンというポリフェノールが血管を柔らかく保つ効果があるとされており、甘酒との相性も良好です。
また、最近の研究(2023年、東京農業大学の発酵食品研究グループ)では、米麹発酵食品を4週間継続摂取したグループで、腸内フローラの多様性が向上し、血圧の数値にも緩やかな改善傾向が見られたという結果が報告されています。4週間という短期間でも変化が見えることは、継続のモチベーションになるはずです。
腸と血圧をまとめてケアする、これが甘酒習慣の本当の価値です。毎日の食事に一杯取り入れる小さな習慣が、半年後の血圧数値を変える可能性を秘めています。
<参考:発酵食品と腸内フローラ・血圧に関する研究情報>
東京農業大学 公式サイト(発酵食品・食品機能研究)