学童期の栄養と発育に関する記述で親が知るべき知識

学童期の栄養と発育について、「バランスよく食べさせれば大丈夫」と思っていませんか?実は給食のない日には約8割の子どもがカルシウム不足になるなど、見落とされがちな事実が多く潜んでいます。

学童期の栄養・発育に関する記述で押さえたい重要ポイント

給食のない日は、約8割の子どもがカルシウムの推奨量を満たせていません。


📋 この記事の3つのポイント
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カルシウムは学童期が勝負

骨の貯金ができるのは思春期まで。給食のない日は200〜470mgものカルシウムが不足しがちで、将来の骨粗鬆症リスクにつながります。

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鉄分不足は学力・集中力に直結

鉄が不足すると脳の情報処理速度が低下し、集中力やイライラにつながります。学童期の子どもに必要な1日の鉄分推奨量は最大14.0mgです。

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学童期の肥満は4割が成人肥満へ移行

「子どもの頃の肥満は成長すれば自然に解消する」は誤解です。学童肥満の約4割が成人後も肥満のままになるというデータがあります。


学童期の栄養と発育の基礎:6〜11歳に何が起きているか

学童期とは、一般的に6歳から11歳(小学校在学期間)を指します。この時期は、身長や体重が着実に増加するとともに、脳・骨・筋肉・内臓などあらゆる臓器が急ピッチで発達する「第二の発育ステージ」です。幼児期とは異なり、学校生活・運動・勉強など活動量が一気に増えるため、必要なエネルギー量も成人に近づいていきます。


エネルギーの観点でいうと、小学校高学年(10〜11歳)の男児では1日に約2,500〜2,600kcal、女児でも約2,350〜2,400kcalが推定エネルギー必要量の目安となっています(日本人の食事摂取基準2025年版)。これは30代の成人女性とほぼ変わらない数字です。意外ですね。


子どものエネルギー必要量の計算式は、大人とは少し異なります。


$$\text{推定エネルギー必要量} = \text{基礎代謝量} \times \text{身体活動レベル} + \text{エネルギー蓄積量}$$


「エネルギー蓄積量」というのは、成長に使う骨・筋肉・臓器の組織を新たに作るためのエネルギーのことです。大人にはない概念で、だからこそ学童期の食事は「維持」ではなく「構築」のためにある、という認識が大切です。


また、この時期は発育の個人差が非常に大きい点にも注意が必要です。同じ学年でも、早熟な子と晩熟な子では体格が数年分以上の差になることがあります。体格指数の評価には、学童期(6〜11歳)には「ローレル指数」が使われます。計算式は次のとおりです。


$$\text{ローレル指数} = \frac{\text{体重(kg)}}{\text{身長(cm)}^3} \times 10^7$$


ローレル指数の判定基準は、100未満がやせすぎ、116〜145が標準、160以上が太りすぎとされています。


発育の基礎が固まるこの時期に何をどれだけ食べるかが、10年後・20年後の体を作る土台になります。それが学童期の栄養と発育について理解することの最大の意義です。


Jミルク「学童期(6〜11歳)の栄養と発育」(カルシウム蓄積量・給食との関係について詳しく記載)


学童期の栄養で不足しがちなカルシウム:骨の貯金は今しかできない

「カルシウムは骨に大事」という知識は多くのお母さんが持っています。ただ、「いつ蓄えるか」については意外と知られていません。骨の密度が最大になる「最大骨量(ピークボーンマス)」は、10代後半〜20代前半に到達します。つまり、骨の貯金ができる期間は学童期・思春期が最後のチャンスです。


日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、学童期・思春期(8〜14歳)に必要なカルシウムの推奨量は1日650〜1,000mgとされています。給食のある日はある程度補えていますが、問題は給食のない日です。


調査によると、給食のない日は約8割の子どもがカルシウムの推奨量を満たせていません。具体的には200〜470mgもの不足が生じているというデータがあります。470mgというのは、牛乳コップ約2杯分(200ml×2=400mg相当)に匹敵する量で、これが夏休みなどの長期休暇中に毎日積み重なると、発育に少なからず影響が出ると考えられています。


カルシウムが不足すると起きることは、骨や歯が弱くなることだけではありません。


  • 🦵 成長スピードが鈍くなる(身長の伸びが滞りやすい)
  • 😤 イライラしやすくなる(神経系の調節にカルシウムが関与)
  • 🧠 集中力が低下する(脳内の神経伝達への影響)
  • 🦷 永久歯が弱くなる(学童期はちょうど永久歯が生え揃う時期)


カルシウムの吸収を高めるには、ビタミンDとの組み合わせが基本です。牛乳・ヨーグルト・チーズなどの乳製品が効率よく摂れる食材ですが、牛乳が苦手な子には小魚(しらす・いわしの丸干し)、豆腐、小松菜・チンゲン菜などの青菜類も有効です。


給食がない休日や夏休みに、おやつで小魚やチーズを取り入れるだけでも補給量が大きく変わります。カルシウム補給は「今日だけ頑張る」より「毎日少しずつ続ける」のが原則です。


日本骨粗鬆症財団「骨が育つ思春期までを大切に過ごす」(最大骨量・1日1,000mgのカルシウム摂取推奨について掲載)


学童期の発育と鉄分不足:子どものイライラ・集中力低下の原因かも

「うちの子、最近授業に集中できないみたい」「すぐイライラして困る」という声を持つお母さんは少なくありません。その原因のひとつとして、意外と見落とされているのが鉄分不足です。


鉄は赤血球のヘモグロビンを作る材料であり、全身に酸素を運ぶ役割を担っています。鉄が不足すると酸素が十分に届かなくなり、脳や筋肉の機能が低下します。特に脳への影響が顕著で、研究によると鉄欠乏状態では「記憶や高次機能を担う海馬の機能が低下し、情報処理速度が下がる」と報告されています。


日本人の食事摂取基準(2020年版)による学童期の鉄の推奨量は以下のとおりです。


年齢 男子 女子
6〜7歳 6.5mg 6.5mg
8〜9歳 8.0mg 8.5mg
10〜11歳 10.0mg 10.0mg(月経あり14.0mg)


10〜11歳の女子で月経が始まっている場合、推奨量は一気に14.0mgまで上がります。これは成人女性(月経あり)の10.5mgを大きく超える数字です。つまり月経が始まった小学生の女の子は、お母さん以上に鉄が必要ということです。


鉄が摂れる食材は、赤身の肉(牛もも・豚レバー)、貝類(あさり・しじみ)、大豆製品(納豆・豆腐)、青菜(ほうれん草・小松菜)などです。鉄には「ヘム鉄(動物性)」と「非ヘム鉄(植物性)」の2種類があり、ヘム鉄のほうが体内への吸収率が約2〜3倍高い点も覚えておくと役立ちます。


非ヘム鉄を摂るときはビタミンCと一緒にとると吸収が上がります。ほうれん草の炒め物にパプリカを加えたり、納豆に刻んだ小ネギをのせたりするだけで十分です。これは使えそうです。


一方、鉄の吸収を邪魔するものも意識する必要があります。緑茶・紅茶・コーヒーに含まれるタンニン、加工食品に多いリン酸塩が鉄の吸収を阻害するとされているため、食事中の飲み物に注意すると効果的です。


日本貧血学術機構「子供のイライラ・集中力低下の背景に鉄分不足の可能性」(成長期の鉄分不足と脳・学習への影響について)


学童期の肥満と発育への影響:「成長すれば治る」が通じない理由

「今は太っていても成長すれば自然に痩せる」と考えているお母さんも多いかもしれません。しかしこれは誤解です。


学童期の肥満は、成人期の肥満に移行しやすいというデータが複数の研究で示されています。具体的には、学童肥満の約4割が成人肥満に移行するとされています(日本小児科学会・日本肥満学会の資料より)。さらに思春期まで肥満が続くと、成人肥満への移行率は70〜80%にまで上昇します。


学童期の肥満判定には「肥満度」が広く使われています。


$$\text{肥満度(\%)} = \frac{\text{実測体重(kg)} - \text{標準体重(kg)}}{\text{標準体重(kg)}} \times 100$$


判定の目安は以下のとおりです(6〜17歳)。


肥満度 判定
20〜29.9% 軽度肥満
30〜49.9% 中等度肥満
50%以上 高度肥満


学童期の肥満が問題とされる理由は、外見だけにとどまりません。脂質異常症・高血圧・耐糖能の低下(糖尿病の前段階)といった生活習慣病が、すでに小学生の段階で見られるケースが報告されています。


もう一点、注意が必要なことがあります。学童期の肥満のほとんど(約95%)は「原発性肥満(単純性肥満)」、つまり食べすぎ・運動不足などの生活習慣が原因です。ホルモン異常などが原因の「二次性肥満(症候性肥満)」は、全体の5%以下とされています。「うちの子は体質だから」と決め込む前に、まず食事内容と運動量を見直すことが重要です。


肥満傾向が気になる場合、エネルギー摂取量を急に減らすよりも、エネルギー消費量を増やす方向を先に検討するのが成長期の鉄則です。なぜなら急激なカロリー制限は、発育に必要な栄養素も一緒に削ることになりかねないためです。活発に体を動かせる環境を作ること、これが最初の一手です。


日本肥満学会「小児肥満症の判定基準」(学童肥満の成人移行率や生活習慣病との関連について掲載)


学童期の栄養と朝食・おやつ:見直したい毎日の食習慣のポイント

学童期の食習慣で、特にお母さんが気をつけたい2つのポイントがあります。それが「朝食の欠食」と「おやつの与え方」です。


まず朝食について。文部科学省の全国学力・学習状況調査(令和元年度)によると、毎日朝食を食べている小学生の割合は約86.7%で、裏を返せば約13%の小学生は何らかの形で朝食を欠食していることになります。調査の結果、「毎日朝食を食べている子どもほど、学力調査の平均正答率が高い傾向がある」ということが明らかになっています。


これは朝食に含まれるブドウ糖が脳の唯一のエネルギー源であることと深く関係しています。前日の夕食から翌日の昼食まで食事をとらない場合、実に12時間以上もエネルギー供給が途絶えることになります。脳はその間、十分に働けません。朝食欠食は学力だけでなく、体力や集中力にも悪影響を与えるというデータも複数存在します。


朝食の内容についても注意が必要です。「主食のみ(ご飯だけ、パンだけ)」という朝食では炭水化物に偏り、たんぱく質やミネラルが不足します。卵1個・チーズ1枚・納豆1パックなど、手間がかからずたんぱく質を補える食品を1品加えるだけで質が大幅に変わります。


次におやつについて。学童期の子どものおやつは、大人の「嗜好品」とは意味が違います。成長期の子どもは胃の容量が小さく、3食だけでは1日に必要なエネルギーや栄養素をすべてまかなえないことが多いため、おやつは「第4の食事(補食)」という位置づけが適切です。


おやつの理想的なエネルギー量は、1日の総エネルギーの10〜15%程度が目安とされています。小学生(10〜11歳)であれば、約250〜380kcal程度です。ポテトチップスやチョコレートなどの市販菓子は糖質・脂質が多い一方、カルシウムや鉄はほぼゼロです。


  • 🧀 チーズ+小魚(カルシウム補給に)
  • 🍙 小さなおにぎり(炭水化物+たんぱく質)
  • 🥛 牛乳+バナナ(エネルギー+カルシウム+カリウム)
  • 🫘 枝豆(鉄・たんぱく質・食物繊維を同時に補給)


おやつの時間を決め、内容に少し気を配るだけで、学童期の栄養摂取量は意外なほど改善します。手間をかけず・毎日続けられることを優先して考えましょう。それが基本です。


農林水産省「食育白書」(朝食摂取と学力・体力の関係についての全国調査データ掲載)


「小学生のおやつは第4の食事」(おやつの役割と血糖・集中力の関係について詳しく解説)