ごはんを冷ますだけで、食物繊維が約1.6倍に増えます。
「難消化性でんぷん」とは、英語で「レジスタントスターチ(Resistant Starch)」と呼ばれる成分のことです。「レジスタント(Resistant)=消化に抵抗する」「スターチ(Starch)=でんぷん」を合わせた言葉で、読んで字のごとく「消化されにくいでんぷん」を意味します。
これまで、ごはんやパン、いも類に含まれるでんぷんはすべて小腸で分解・吸収され、エネルギーになると考えられていました。つまり、でんぷん=太る原因という認識が広まったわけです。しかし近年の研究で、でんぷんの中には消化酵素で分解されずに大腸まで届くものがあることが明らかになりました。それが難消化性でんぷんです。
この成分の最大の特徴は、食物繊維と同様の働きをするという点にあります。食物繊維には水溶性と不溶性の2種類がありますが、難消化性でんぷんはなんと両方の機能を兼ね備えているとされています。腸内環境を整える働きと、便のかさを増やして排便を促す働き、どちらも期待できるというわけです。これは使えそうです。
さらに注目すべきは、難消化性でんぷんが「発酵性食物繊維」の一種であるという点です。善玉菌のエサとなって腸の奥まで届き、ビフィズス菌や酪酸菌の増殖をサポートします。酪酸菌が生み出す「酪酸(らくさん)」は大腸の主要エネルギー源であり、腸のバリア機能や免疫機能の維持にも深くかかわっています。
| 種類 | 性質 | 代表的な食品 |
|---|---|---|
| RS-1 | 細胞壁に囲まれ物理的に消化されにくい | 全粒粉パン・精製度の低い穀物 |
| RS-2 | 生でんぷんで消化されにくい結晶構造を持つ | グリーンバナナ・生じゃがいも |
| RS-3 | 加熱後に冷ますことで再結晶化(老化でんぷん) | 冷やごはん・おにぎり・冷えたパスタ |
| RS-4 | 化学処理によって消化耐性を持つ | 加工食品・スナック菓子 |
| RS-5 | 脂肪との複合体 | 油脂で調理したでんぷん含む食品 |
日本人が主食である穀類の摂取量を減らしていることで、本来摂れていたはずの難消化性でんぷんの摂取量も減少していると指摘されています(厚生労働省「国民健康・栄養調査」より)。糖質を控えるあまり、腸に必要な栄養が届かなくなっている可能性があるのです。
日清製粉株式会社「レジスタントスターチ|小麦のチカラ」(レジスタントスターチの種類と腸内への働きについて詳しく解説)
難消化性でんぷんを含む食品を摂ることで得られる健康効果は、大きく4つあります。それぞれ具体的に確認しておきましょう。
まず最も注目を集めるのが、食後の血糖値の急上昇を抑える効果です。通常のでんぷんは消化酵素で素早くブドウ糖に分解され、小腸から一気に血液へ流れ込みます。これが血糖値の急上昇を招き、動脈硬化や糖尿病リスクを高めます。ところが難消化性でんぷんは小腸でほとんど消化されないため、血糖値がゆるやかにしか上がりません。血糖値のコントロールが基本です。
しかもそれだけではありません。大腸に届いた難消化性でんぷんが腸内細菌に発酵されると、短鎖脂肪酸が生成され、「インクレチン」というホルモンの分泌が促進されます。このインクレチンは、血糖値を下げるインスリンの合成・分泌をサポートするホルモンです。つまり、食べながら血糖値管理を助けるというわけですね。
2つ目は腸内環境の改善効果です。難消化性でんぷんは大腸の奥(下行結腸)まで届いて善玉菌のエサになります。腸内フローラの理想的なバランスは「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」とされており、善玉菌を増やすことがカギです。短鎖脂肪酸の産生により腸内が弱酸性に保たれ、悪玉菌の増殖が抑制されます。
3つ目は体重増加の抑制効果です。難消化性でんぷんのカロリーは通常のでんぷんの約半分とされています。小腸では吸収されず、大腸で短鎖脂肪酸として代謝されるため低カロリー。さらに消化に時間がかかることで満腹感が長続きし、余分な食べ過ぎを防ぎやすくなります。
4つ目が美肌効果です。腸の状態は肌の状態に直結しており、腸内環境を整えることで有害物質の吸収が抑えられ、肌荒れの改善にもつながると考えられています。腸活が結果的に美肌につながるということですね。
2024年2月に学術誌「Nature Metabolism」に掲載された研究では、肥満または過体重の成人が難消化性でんぷんを8週間摂取した結果、腸内微生物叢を整え、全身性の炎症を軽くし、インスリンの効きやすさを改善、脂肪の吸収を抑えることで体重減少が促されたことが示されています。
難消化性でんぷんを効率よく摂るには、含有量の高い食品を知っておくことが大切です。研究者の間では、健康効果を実感するための目安量として「1日15グラム」が推奨されています(米テキサス・ウーマンズ大学のミンディ・A・パターソン准教授)。しかし現状では、多くの人が1日4〜5グラム程度しか摂取できていないと報告されています(Journal of Nutrition、2020年)。
1日15グラムという目標は、いきなり達成しようとすると食べ過ぎになる可能性があります。少しずつ摂取量を増やしていくのが条件です。また摂りすぎると、お腹の張り・下痢が起きることもあるため、体の様子を見ながら取り入れましょう。
再春館製薬所「レジスタントスターチとは?効果や含有量が多い食品について解説」(食品別の含有量を具体的な数値で比較。日常の食事への取り入れ方も紹介)
難消化性でんぷんを多く摂るための最も手軽な方法が、「調理後に冷ます」というひと手間です。これが今、主婦層を中心に注目を集めている腸活テクニックです。
でんぷんは加熱すると「糊化(α化)」して消化されやすくなりますが、冷えると「老化(β化)」して再び消化酵素が作用しにくい構造に戻ります。この老化でんぷんこそが難消化性でんぷんの一種「RS-3」です。つまり冷ますほど、食物繊維と同じ働きをする成分が増えるというわけです。
炊きたてごはんを冷蔵庫で冷やすだけで、含有量は炊きたての約1.6倍に増えます。3食すべてを冷やごはんに切り替えると、1日で約9グラム分の難消化性でんぷんを上乗せできると計算されています(笠岡誠一郎教授著『炭水化物は冷まして食べなさい。』より)。さらに、冷めたもち麦は白米の約5倍の難消化性でんぷんを含むとされており、白米にもち麦を混ぜて炊いて冷ますと、効率はさらに上がります。
ただし、いくつかの注意点もあります。
おにぎりやお弁当のごはん、冷製パスタ、ポテトサラダなど、すでに冷えた状態で食べている料理は、難消化性でんぷんを自然に多く摂れています。冷ます調理に注意すれば大丈夫です。普段の料理に少し意識を加えるだけで、腸活の質が変わってきます。
はくばく「ダイエットの味方!主食に含まれるレジスタントスターチ」(冷ます調理法とレジスタントスターチの腸活・血糖値への作用を、研究データとともに解説)
糖質制限をしているから炭水化物は控えている——そう考えている方ほど、難消化性でんぷんの摂取が不足しやすいというのが現状です。これは見落としがちな盲点です。
穀類やいも類などでんぷんを含む食品を制限すると、同時に難消化性でんぷんの摂取機会も失われます。「大腸に流入する難消化性の繊維質としては、食物繊維よりも難消化性でんぷんのほうが多い」という研究結果もあるほど(海老原 清:日本調理科学会誌 2014)。つまり穀類を減らすことは、食物繊維以上の腸の栄養源を断ち切ることにもなりかねません。
穀類を一切食べないという人は、腸が汚れている可能性が高いと指摘する専門家もいます。難消化性でんぷんがまったく摂れていないからです。これは厳しいところですね。炭水化物を完全に排除するのではなく、冷やごはんやいも類を適切に取り入れることで、ダイエット効果を保ちながら腸の健康も守ることが可能です。
難消化性でんぷんと腸活の関係を整理すると以下のようになります。
腸内環境の理想的なバランスは「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」とされています。このバランスが崩れると、日和見菌が悪玉菌寄りに働き始めます。難消化性でんぷんを含む食品を日常的に取り入れることが、このバランスを維持するうえでの基本です。
腸活をより積極的に進めたい方には、乳酸菌や酪酸菌を含む整腸薬やヨーグルトを難消化性でんぷんと組み合わせる方法もあります。善玉菌そのものを補給しながら、難消化性でんぷんでそのエサも同時に届けるという考え方です。腸内環境の改善を目標に、食事から見直してみましょう。
日清製粉「でんぷん?食物繊維?大注目の『レジスタントスターチ』とは」(大妻女子大学・青江誠一郎教授監修。糖質制限と食物繊維不足の関係をわかりやすく解説)

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