毎日ヨーグルトを食べているのに、実は乳酸菌の9割以上が腸に届いていません。
乳酸発酵食品とは、乳酸菌が糖を分解して乳酸を生み出す「乳酸発酵」というプロセスを経てつくられた食品のことです。乳酸が増えることで食品のpHが下がり、有害な細菌が増えにくくなります。これが発酵食品の「保存性の高さ」につながっている理由です。
乳酸菌は2022年時点で400種類以上が発見されており、同じ「乳酸発酵食品」でも菌の種類によって効果や特性が異なります。つまり一口に乳酸発酵食品といっても、中身はかなり多様なのです。
以下が代表的な乳酸発酵食品の一覧です。
| カテゴリ | 代表的な食品 |
|---|---|
| 🥛 乳製品 | ヨーグルト、ケフィア、サワークリーム、ナチュラルチーズ、発酵バター、乳酸菌飲料 |
| 🥬 野菜・穀類 | ぬか漬け、キムチ、水キムチ、すんき漬け、すぐき漬け、柴漬け、たくあん、ザワークラウト、ピクルス、メンマ、ザーサイ |
| 🍜 調味料 | 味噌、醤油、魚醤、ナンプラー |
| 🍖 肉・魚 | サラミ、生ハム、辛子明太子、塩辛、なれずし、ニシン漬け、くさや、アンチョビ |
| 🍹 飲料・その他 | マッコリ、甘酒、酵素ドリンク |
意外に感じるかもしれませんが、味噌や醤油、辛子明太子なども乳酸発酵食品の一種です。乳酸菌が関わっているということですね。
ただし、同じ名前の食品でも製法によっては乳酸菌が含まれないものがあります。たとえば市販のキムチの多くは「キムチ風浅漬け」で、乳酸発酵を経ていないものが混在しています。これについては後のセクションで詳しく解説します。
乳酸菌の多い食品の量について参考になる情報はこちら。
乳酸菌の多い食品一覧とランキング|川島屋(管理栄養士監修・乳酸菌量の比較あり)
同じ乳酸発酵食品でも、含まれる乳酸菌の量には大きな差があります。管理栄養士監修の情報をもとにまとめると、次のような順序になります。
乳酸菌量は商品や製造時期によっても変動するため、この順位はあくまで目安です。大切なのは「1種類に頼らず複数の食品を組み合わせること」です。これが基本です。
1日に理想とされる乳酸菌の摂取量は数百億〜1兆個ともいわれています。1gあたり3億個の水キムチを基準にすると、1日500億個を摂ろうとすれば約167gが必要。ご飯茶碗の8割ほどの量をキムチだけで毎日食べ続けるのは現実的ではありません。朝食にヨーグルト、昼食に味噌汁、夕食にぬか漬けを加えるといった組み合わせ摂取が現実的な方法です。
乳酸発酵食品を「腸活のために」と買ったのに、実はただの浅漬けだった、というのは非常にもったいない話です。市販されているキムチの多くは「キムチ風浅漬け」で、調味料で味付けしただけの乳酸菌がほぼゼロの製品が混在しています。
伝統的な製法で作られたキムチには1gあたり約8億個もの乳酸菌が含まれるとされており、乳酸発酵していない浅漬けとの差は約160倍にもなります。これは大きな違いです。
本物の乳酸発酵キムチを選ぶときは、以下のポイントを確認してください。
同じことがぬか漬けや漬物にも当てはまります。市販の漬物には製造コストを抑えるために発酵工程を省いたものが多く、見た目では判断できません。成分表示を必ず確認することが大切です。
ヨーグルトについても注意点があります。商品によっては乳酸菌を少ない状態にしてあったり、プロセスチーズのように加熱処理で菌が死んでいるものも存在します。「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」では乳酸菌の生存状況がまったく異なるため、腸活目的ならナチュラルチーズを選ぶことを意識しましょう。
本物の発酵食品の選び方について詳しくはこちらも参考になります。
キムチソムリエ直伝|発酵キムチと浅漬けキムチの見分け方(キムチの乳酸菌量比較あり)
乳酸発酵食品には「動物性乳酸菌を含むもの」と「植物性乳酸菌を含むもの」があります。この区別は、もとの乳酸菌がどんな環境で育ったかによるものです。
動物性乳酸菌はヨーグルトやチーズなど乳製品から摂れる乳酸菌です。一方、植物性乳酸菌は味噌・ぬか漬け・キムチ・醤油・すんき漬けなど、野菜や大豆などを原料とする発酵食品に含まれています。植物性乳酸菌の種類は動物性の約10倍にのぼるとも言われます。
腸活の観点から注目されているのが、植物性乳酸菌の「腸への届きやすさ」です。植物性乳酸菌は過酷な塩分・酸・温度変化の中で発酵してきたため、胃酸や胆汁に対する耐性が強く、生きたまま腸まで届きやすいという特性があります。動物性乳酸菌は比較的環境への適応力が弱く、胃酸で死滅しやすい傾向があります。
ただし、重要な注意点があります。腸内細菌学会によれば「動物性か植物性かで効果が分かれるということはない」とも指摘されており、実際の効果は菌の「種類(菌株)」によって左右されます。腸活として乳酸発酵食品を選ぶときに大切なのは出所より菌株です。
結論は「動物性と植物性の両方を日常的に食べること」です。ヨーグルト(動物性)と味噌汁やぬか漬け(植物性)を組み合わせた食生活が、複数種類の乳酸菌を効率よく摂取できる最もバランスのよい方法です。
植物性乳酸菌の特性について詳しくはこちらが参考になります。
東京農業大学|日本の食文化「植物性乳酸菌」を科学する(PDF・学術資料)
乳酸発酵食品を毎日食べているのに効果を実感しにくいという声は少なくありません。その理由のひとつが「乳酸菌は腸に定着しない」という事実です。摂取した乳酸菌の多くは「通過菌」として数日以内に便とともに体外に排出されます。これは悪いことではなく、通過しながら腸内環境に働きかけるのが乳酸菌の本来の役割だからです。
だからこそ、毎日継続して摂取することが基本です。
さらに効果を高めるには「プレバイオティクス」との組み合わせが重要です。プレバイオティクスとは、腸内の善玉菌のエサになる食品成分のことで、代表的なものはオリゴ糖と食物繊維です。これらを一緒に摂ることで腸内の善玉菌が活発に増え、乳酸発酵食品の効果が底上げされます。これは使えそうです。
以下のような組み合わせが具体的でおすすめです。
| 乳酸発酵食品 | 組み合わせる食材 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| ヨーグルト | バナナ・はちみつ・大豆 | オリゴ糖が乳酸菌のエサになり腸内で善玉菌が増えやすくなる |
| 味噌汁 | わかめ・海藻・里芋 | 水溶性食物繊維が腸内発酵を助ける。塩分排出も期待できる |
| ぬか漬け | 玄米ご飯・ごぼう・玉ねぎ | 不溶性・水溶性食物繊維を組み合わせて便のかさを増す |
| キムチ | 納豆・豆腐・ごぼう | 納豆菌と乳酸菌の組み合わせで腸内フローラが多様に整いやすい |
また、腸の菌は3〜4日しか活動できないとも言われています。つまり、週に数回まとめて食べるよりも、少量でもほぼ毎日食べる習慣のほうが腸内環境の維持には効果的ということです。毎朝ヨーグルト、夕食に味噌汁とぬか漬けひとつ、という小さな習慣で十分なスタートです。
乳酸菌と食物繊維の相乗効果についての詳しい解説はこちら。
乳酸菌と食物繊維の魅力を解説(八重垣酒造バイオ研究所・専門的コラム)
「味噌は煮立てると栄養が死ぬ」という話を一度は聞いたことがあるかもしれません。たしかに乳酸菌は熱に弱く、50℃前後から死滅が始まります。沸騰した味噌汁のなかでは、乳酸菌は生きていられません。厳しいところですね。
ではもう意味がないのか、というと、そうではありません。
加熱によって死んだ菌(死菌)にも健康効果があることが現代の研究で明らかになっています。生きた菌(生菌)が腸内で直接働くプロバイオティクス効果とは異なりますが、死菌は免疫系の活性化や腸内環境の改善に貢献することがわかっています。つまり「加熱しても無駄ではない」ということです。
ただし、より多くの生きた乳酸菌を摂取したい場合は以下の点を意識することが大切です。
加熱が気になる乳酸発酵食品の摂取については、調理法を変えるだけで生菌を無駄にしない食べ方ができます。何のために摂るかを意識した調理の工夫が、日々の腸活の質を変えてくれます。日常の小さな見直しが大切ですね。
乳酸菌と加熱調理に関する科学的な背景はこちらが参考になります。