てんさい糖を使えば血糖値は気にしなくていい、と思って毎日の料理に使っていませんか?
てんさい糖は、北海道で主に栽培される「甜菜(ビート・サトウダイコン)」という根菜を原料にした砂糖です。自然由来でミネラルも含まれることから、健康志向の主婦を中心に広く使われています。しかし、その正体をきちんと知っておくことが大切です。
てんさい糖の主成分はショ糖で、全体の約85%を占めています。ショ糖は体内でブドウ糖と果糖に分解され、特にブドウ糖が血液中に吸収されると血糖値を上昇させます。つまり基本的な仕組みは上白糖と変わりません。
「でも、てんさい糖はオリゴ糖が含まれているから安心では?」と思う方もいるでしょう。
確かに、てんさい糖にはラフィノースやケストースといった天然のオリゴ糖が約5%含まれています。オリゴ糖は小腸でほとんど吸収されずに大腸に届き、腸内のビフィズス菌の栄養源となります。血糖値への影響は極めて限定的です。
ただ、この5%というのはかなり少量。大さじ1杯(約9g)のてんさい糖に含まれるオリゴ糖はわずか0.45g程度です。腸内環境への恩恵はあるものの、残りの約85%はショ糖ですから、食べすぎると血糖値は当然上がります。
つまり「体にいい砂糖=血糖値が上がらない砂糖」ではないということです。
| 砂糖の種類 | GI値 | 100gあたりのカロリー | オリゴ糖 |
|---|---|---|---|
| てんさい糖 | 65 | 357kcal | 約5%含む |
| 上白糖 | 109〜110 | 384kcal | 含まない |
| 黒糖 | 99 | 352kcal | 含まない |
| きび砂糖 | 100 | 382kcal | 含まない |
参考データとして、文部科学省の食品成分データベースやGI値の指標がよく活用されます。上白糖との比較で言えば、てんさい糖のほうがGI値が低く、血糖値の上昇は緩やかです。これは事実です。ただし「上がらない」のではなく、「上がり方が穏やか」という表現が正確です。
健康管理のための参考資料として、厚生労働省のe-ヘルスネットに詳しい情報があります。
糖尿病の食事について詳しく知る|e-ヘルスネット(厚生労働省)
GI値(グリセミック・インデックス)とは、食品を食べた後の血糖値の上昇スピードと上昇幅を数値化した指標です。基準値はブドウ糖を100とした場合の相対値で表されます。
GI値の目安は以下の通りです。
てんさい糖のGI値は65です。これは中GI食品に分類されます。
上白糖(109)と比べると44ポイントも低い数値で、血糖値の上昇スピードは確かに異なります。これがてんさい糖が「体に優しい砂糖」として注目される主な理由のひとつです。
意外ですね。
ただし、注意が必要な点があります。糖尿病の食事管理で推奨されることが多い「低GI基準」は55以下です。てんさい糖のGI値65は、この低GI基準には届いていません。「低GIだから安心」という認識は、厳密には正確ではないのです。
さらに言えば、GI値はあくまで「1食あたり50gの糖質を含む食品を食べたときの上昇速度」の指標です。実際には使用量も重要で、大量に使えばGI値が低くても血糖値は大きく上がります。
料理に砂糖を使う場面で気になる方は、てんさい糖を選ぶことには意味があります。ただし「てんさい糖だから多めに入れても大丈夫」という考え方は危険です。GI値が低めということと、血糖値への影響がゼロであることは別の話です。
GI値(グリセミック・インデックス)について詳しく知る|健康倶楽部
てんさい糖が他の砂糖と一線を画している最大の特徴は、砂糖の中でほぼ唯一オリゴ糖を含んでいるという点です。
含まれるオリゴ糖は「ラフィノース」と「ケストース」という種類で、いずれも腸内のビフィズス菌の栄養源(プレバイオティクス)になります。これが基本です。
腸内環境に良い影響として、以下のことが期待されています。
腸活に関心が高い主婦の方には、この点はうれしい情報ですね。
ただ、現実的な話をすると、てんさい糖のオリゴ糖含有量は約5%です。腸活目的でオリゴ糖を積極的に摂りたい場合、てんさい糖だけではなかなか量が足りません。1日に必要なオリゴ糖の目安量は2〜10gとされており、てんさい糖の大さじ1杯(約9g)に含まれるオリゴ糖は0.45g程度です。これは使えそうです。
腸活の補助として毎日の料理でてんさい糖を活用しながら、腸内環境を本格的に整えたい場合はオリゴ糖サプリや腸活ヨーグルトなどを組み合わせるのが効率的です。てんさい糖はあくまで「腸に優しい砂糖」という位置づけで捉えると、過度な期待も失望もなく使えます。
ホクレン農業協同組合連合会の公式情報によれば、てんさい糖のオリゴ糖含有率は5%以上であることが示されています。
てんさい糖のオリゴ糖について詳しく知る|ホクレン農業協同組合連合会
てんさい糖が体に優しいことは確かですが、「量」を無視すると元も子もありません。これが条件です。
WHO(世界保健機関)は2015年に砂糖の摂取に関するガイドラインを公表しており、「砂糖などの遊離糖類を1日の摂取エネルギーの10%未満にすること」を強く推奨しています。一般的な成人女性(1日1600〜1800kcal摂取の場合)に当てはめると、砂糖の適切な上限量は1日約40g=大さじ約2.6杯です。
ところが、農林水産省が公表した2022年度のデータによると、日本人1人あたりの砂糖の年間消費量は1日あたり約41.9gです。平均的な食事をしているだけで、すでにWHOの推奨上限をわずかに超えてしまっている計算になります。
これは厳しいところですね。
家庭料理でも砂糖は意外と使います。煮物や照り焼き、煮魚の甘辛だれ、肉じゃが……日々の料理に砂糖(てんさい糖含む)が入ることは珍しくありません。てんさい糖だからといって惜しみなく使っていると、知らないうちに過剰摂取になっている可能性があります。
実際に意識してほしいのは、1回の料理での使用量をできるだけ「大さじ1杯以内」に収めることです。甘味はみりんや甘酒など他のものでも補えますし、味付けのバランスを工夫すると砂糖の使用量を自然に抑えられます。
「てんさい糖は体にいいから大丈夫」ではなく、「てんさい糖を上手に使いながら、量も意識する」というスタンスが大切です。
結局のところ、白砂糖をてんさい糖に変えることに意味はあるのか?という疑問は当然わいてきます。
答えとしては「置き換えには一定のメリットがある。ただし期待しすぎは禁物」です。
てんさい糖のメリットをまとめると次の通りです。
一方でデメリットも把握しておきましょう。
選び方のポイントとしては、「ホクレンのてんさい糖」や「日本甜菜製糖(ニッテン)のてんさい糖」が代表的なブランドです。いずれも北海道産の甜菜を原料としており、オリゴ糖含有量が明記されているものを選ぶと安心です。
スーパーで購入する場合は、商品ラベルの「原材料名」を確認しましょう。「てんさい含蜜糖」と表記されているものが、オリゴ糖を含むタイプです。「ビートグラニュー糖」は精製度が高く、オリゴ糖はほとんど含まれていないため注意が必要です。これだけ覚えておけばOKです。
普段の料理を少しだけ見直すだけで、血糖値へのケアも腸活も同時に意識できるのが、てんさい糖の魅力です。完璧な「ヘルシー砂糖」ではないけれど、正しく使えば毎日の食生活の質を高める一助になります。
てんさい含蜜糖の栄養成分詳細|日本食品標準成分表(文部科学省)